嗜銀顆粒性認知症(しぎんかりゅうせいにんちしょう)をご存知でしょうか。
認知症のスクリーニングテスト(特定の病気や異常の早期発見を目的に、多くの人を簡易に検査する方法)である、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)を作成した、長谷川和夫先生も、嗜銀顆粒性認知症という診断でした。
嗜銀顆粒性認知症の原因と病理
嗜銀顆粒性認知症では、神経細胞に「嗜銀顆粒」という異常なタンパク質が蓄積しやすく、これが病気の原因とされています。この嗜銀顆粒は、特に、海馬周辺や側頭葉などの、記憶や情動に関わる部分に蓄積することが多く、タウタンパク質(脳の神経細胞内で構造を支える役割を持つタンパク質で、異常があると認知症などの原因になるもの)の異常が関係しているとされています。
症状
アルツハイマー型認知症と、前頭側頭型認知症の症状と重なる部分があります。
・記憶障害:特に短期記憶の保持に障害を受けます。
・常同行動や感情の鈍麻:同じことを繰り返し行ったり、感情が鈍くなります。
・注意力の低下: 集中力や、注意を持続させる能力が、低下する傾向があります。
診断
嗜銀顆粒性認知症は、診断が難しい認知症の一つです。
MRIなどの画像診断では、特異的な変化が見られることは少ないです。
最終的な確定診断は病理検査(解剖)でわかります。
しかし、医療技術の向上によって、嗜銀顆粒性認知症を含む、さまざまな種類の認知症がより正確に診断されるようになってきています。
以前は診断されなかったケースも明らかになってきています。病理学的な研究の進展によって、嗜銀顆粒性認知症の特定を可能したという報告が増えています。
治療
特別な治療法は、今はありません。
認知機能の低下などに対して、症状を軽減するための、対症療法が行われることが多いです。たとえば、記憶障害に対しては、認知症治療薬(アリセプトなど)の使用が検討されることがありますが、その効果は個人差があります。
心理社会的なサポート
アルツハイマー型認知症では不安やいらだちが見られることが多いです。
嗜銀顆粒性認知症では感情が鈍くなり、無関心や共感の低下が目立ちます。
感情や不安に寄り添い、気持ちを受け止めるための関りが必要です。ご本人が、安心して話せる環境を作り、不安を和らげます。
決まったスケジュールを組む
常同行動や固執した行動が見られる場合は、安心できる日課や環境を整えるサポートを行い、ご本人が落ち着けるよう配慮します。
毎日、同じ時間に食事や睡眠、散歩などの活動を行うことで、予測可能な生活リズムを作ります。たとえば、朝は決まった時間に起きて朝食を取る、午前中に軽い活動や趣味を行う、といった形で、スケジュールを組むと安心感を持ちやすくなります。
まとめ
嗜銀顆粒性認知症は、一般的な認知症とは異なる特徴を持つため、症状や進行を理解し、適切な対応をすることが大切です。
また、80歳以上の高齢者の間で発症リスクが高いとされているため、高齢化とともに嗜銀顆粒性認知症は増えていくことが予想されています。
今後の研究によって、複数の認知症タイプを合併するケースが、さらに解明されることが予測されています。結果として、嗜銀顆粒性認知症の認知度が高まると考えられます。
解明された情報を基に、よりよいケアの方法が求められると思います。