①バリデーションとは
②バリデーションの目的
③バリデーションの構造(老年学理論やフェーズを主に解説)
④まとめ
①バリデーションとは
認知症の方の感情や、その人が今生きている世界に寄り添うための、コミュニケーション法。
バリデート→その人の気持ちを認めること。
その人をバリデートするということは、認知機能が低下していても、「共感」を通じて、価値ある存在として向き合い、本人の表出する感情をありのままに受け止めます。
逆にその人の感情を否定するということはその人自身を否定することになります。
「共感」することで、信頼が生まれます。信頼から安心感、安心感から精神的な力、精神的な力から自尊心が新たに芽生え、その自尊心によってストレスが減ります。
②バリデーションの目的
・利用者の安心感を築く
・利用者との間に信頼関係を築く
・共感によって利用者が感情表出できる
・利用者が未解決の問題を解決するための支援を行う
・利用者が自分はまだ価値があると感じることができるよう支える
③バリデーションの構造→「理論」、「共感的態度」、「テクニック」
「理論」というのは、認知症の方の行動を理解する手助けとなる「※老年学理論」。この理論をを土台にして、「共感的態度」が示されます。そして、「理論」と「共感的態度」から、見当識障害のある高齢者の尊厳を回復するための言語的・非言語的「テクニック」が具体化されていきます。
※「老年学理論」:マズローの欲求のピラミッド、エリクソンのライフステージとライフタスク論
マズローの欲求のピラミッド~下の段階から
生理的欲求→感覚刺激を求める欲求と性的表現をする欲求
安全欲求→世話をしてもらいたい欲求
所属・愛情の欲求→愛されたい欲求、所属したい欲求
自尊欲求→地位、自尊心、役に立ちたい、自分らしさ(アイデンティティ)への欲求
自己実現の欲求→安らかな死を迎えるために、まだやり終えていないことを解決する欲求
エリクソンのライフステージとライフタスク論
ステージ→心理社会的危機(課題、挑戦)👉獲得される徳
乳児期→基本的信頼 対 基本的不信👉希望
幼児期初期→自律性 対 恥、疑い👉意志
遊戯期→自主性 対 劣等感👉目的
学童期→勤勉性 対 罪悪感👉適格
青年期→アイデンティティ 対 アイデンティティの混乱👉忠誠
前成人期→親しみ(親密) 対 孤立👉愛
成人期→生殖性(生み出す) 対 停滞性👉世話
老年期→統合(成熟) 対 絶望👉英知
「テクニック」とは
認知症の方をコミュニケーション能力や行動よって4つのフェーズに分け、そのフェーズの特徴にあった「テクニック」を適用していきます。
フェーズ1
・コミュニケーションがとれ、見当識も保たれている。
・否定をしたり、作り話をすることで、懸命にまだ失われていないものにしがみついている。
フェーズ2
・コミュニケーションはとれるが、多くの時間は「その人の現実」の中で生きている。
・自分の欲求や感情を、あまりフィルターをかけずに表現する。
フェーズ3
・まだコミュニケーションはとれるが、大抵は欲求や感情を自分の中に秘めている。
・動作や音で欲求や感情を表現する。
フェーズ4
・周りの人が知覚できるほどの表現や会話はなく、コミュニケーションがほとんどとれない。
・欲求や感情をほぼ完全に自分の中に閉じ込めている。
フェーズは、別のフェーズに移ることがよくあり、ずっと同じフェーズにいるわけではありません。
④まとめ
マズローの欲求や、ライフタスク理論を土台に、認知症の方に対し共感的態度で接する。そして、その方がどのフェーズにいるか判断して、フェーズに適したテクニックを使って、その方の本人の表出する感情をありのままに受け止めていく、コミュニケーション技法。