中国の哲学者である、「老子(ろうし)」をご存知でしょうか。
老子は「無為自然(むいしぜん)」の生き方を説いた人物です。
「無為自然」とは、「ありのままでいい」ということです。
老子の弟分のような存在で「荘子(そうし)」という、老子と近い思想を持っています。
この「老子」と「荘子」の哲学は、「老荘思想(ろうそうしそう)」とよばれています。
二人の「ありのままでいい」という「道(タオ)」という哲学があります。
「道(タオ)」とは何か
「道」とは、「宇宙を生み出す根源の力」ということです。
これから、解説しますが、理解しなくても大丈夫です。
「道」は
・みようとしても、みえない。
・きこうとしても、きけない。
・つかまえようとしても、つかまえられない。
・とうていはかり知れないもの。
「道」はつかみどころがないゆえに、はかりしれない力を持っています。
「全て」の存在を生みだす力です。
老子の言葉
「名有るは、万物の母なり。」
名前がある時、「道」は「万物の母」であるという意味です。
すべての母である「道」のまえでは、「現実」も「夢」も、同じようなもの。
「自分」とおもっているものも、「世界」とおもっているものも、どんどん変化していきます。
同じ人間、同じ世界なようで、違う人間、違う世界に変化しながら生きています。
「これが現実だ」といえるものは存在していないかもしれません。
「道」が教えてくれること
人も世界も普遍的なものではなく、常に変化して存在している。
「これが現実」だと言っている間にも、その現実は変化している。
だから「道」はつかみどころがない。
「ありのまま」「そのまま」に、「変わらない自分」に固執しないこと。
「変わらない自分」を保つことは苦しいこと。
変化の波に乗って生きることで、苦しみから解放される。
そんな教えを、老子と荘子が教えてくれたのだと思います。
認知症の方も、変わりゆく世界の波に乗って生きることで、苦しみから少し解放されるのではないかと思います。そのためにも、周りの人達が、認知症の方の世界を否定しないことが大切ではないかと考えます。むしろ、その世界の波に気持ちよく乗れるように、肯定したり、時には一緒にその波に乗ることができたら、心満たされるものがあるのではないかと思います。
参考文献
自分とか、ないから。教養としての東洋哲学 (サンクチュアリ出版) | しんめいP, 鎌田東二 |本 | 通販 | Amazon