言葉が伝わらない?失語を理解して、認知症の方と心を通わせる方法

投稿者: | 2024年10月25日

認知症の方との会話で、話が上手く伝わらなかったり、どんなことを伝えようとしているかが、分からない時があります。介護されている方はそんな経験はないでしょうか?
今回は、失語症について解説し、会話する時のコツをお話します。

失語(症)
これまで、覚えてきた言語の理解と表出する能力に障害がある状態です。
話す・聞く・読む・書くという、言語モダリティー(言葉を使って意思や感情を伝えるさまざまな方法)のすべてが障害された状態です。

一つの言語モダリティーの中で、単独で障害された場合
・純粋語ろう(じゅんすいごろう):言葉を聞いたり、書いたりすることはできますが、話すことができません。
・純粋語唖(じゅんすいごあ):声を出して話すことはできませんが、読んだり聞いたりすることはできます。
・純粋失読(じゅんすいしつどく):読むことのみできない状態です。
・純粋失書(じゅんすいしっしょ):書くことだけできない状態です。
※「純粋」とは、一つの障害が他の能力に影響を与えずに、ある一つの能力だけが失われる現象のことをいいます。
これらが、認知症の進行の経過の中で生じる場合は「失語」
「失語」が障害の中心にある場合を「失語症」といいます。
失語が生じるとコミュニケーションに大きな支障がでます。

脳の何処に障害があるかで、様々な種類の失語があります。
失語の理解のためには、現れた症状と障害部位、そしてその機能について十分な神経心理学的理解(脳の働きが心や行動にどのように影響を与えるかを理解すること)が不可欠です。
そのために、失語症検査(言葉を話す・理解する能力を評価するテスト)やニューロイメージング(脳の写真を撮って調べる方法です。MRIやCTスキャンなどで脳の状態を調べます。)を通して、失語の様相(物事の外見や状態のありさま)を明らかにする必要があります。

「失語症」は、言語以外の認知機能の低下はないか、あっても言語リハビリテーションによって、長期的には機能回復できる可能性もあります。

認知症に伴う失語は、認知症の進行の過程で出現するものです。
コミュニケーションの量が認知症を持つ前より、不足しないようにすることが大切です。非言語的コミュニケーションもフルに使って、積極的なコミュニケーションが重要となります。

次に、失語症を持つ方とコミュニケーションを取る際の具体的なコツをご紹介します

視線を同じ高さにしてゆっくり話す:目線を合わせることは基本ですが、相手に安心感を持って頂くためにとても大切です。また、ご本人が理解しやすいように、急がずゆっくりと話しかけます。答えがすぐに返ってこなくても、「待つ」姿勢が大切です。「待つ」ことをしていると、ご本人が何かを言いたそうにしている、そろそろ言葉が出てくる、そんな感覚を得ることもできます。

シンプルな言葉を使う:複雑な表現を避けて、わかりやすい言葉を使います。

視覚的なヒントを加える:身振り手振りを加えると、言葉が補強されて、理解が促されます。

ご本人の言いたいことを推測する:ご本人が、言葉に詰まった時、まずは待ちます。どうしても言葉にできずに、もどかしくなっていると感じたら、「坂山さんがおっしゃりたいことは、こういうことですか?」と、言いたいことを推測して、フォローすることも時には必要です。

まとめ
「失語の理解のためには、現れた症状と障害部位、そしてその機能について十分な神経心理学的理解が不可欠」とお伝えしました。それも大切なことですが、ご本人が伝えたくても伝えられないもどかしさや不安に寄り添うことが大切です。ご本人の気持ちに共感することも大切なことです。そして、「待つ」という姿勢が安心感を生みます。答えを急がされてしまうと、不安感を助長させてしまいます。
「失語」に対するケアとして、言葉が返ってくることがゴールではありません。言葉を超えて、その方の思いに寄り添っていくことで、安心感をもって頂くことができると思います。

参考図書
Amazon.co.jp: 認知症ケア用語辞典 : 日本認知症ケア学会認知症ケア用語辞典編纂: 本

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