「苦しみは一人じゃない」──認知症とピアサポートが生む心の支え

投稿者: | 2024年10月28日

「ピアサポート」というものをご存知でしょうか?
ピアとは、「仲間」、「同僚」、「同等の人」という意味があります。
同じ問題、境遇や環境を仲間(ピア)で支えあう(サポート)を、「ピアサポート」と言います。
このピアサポートにはどんなことが期待できるのかを解説したいと思います。

対象となる方
主に、社会的マイノリティ(少数派)の方が集まります。例えば、周囲から理解されにくい病気(認知症、精神疾患)、障がい、事故や事件の被害者の当事者の方です。
同じ悩みや苦しみを持つ方がいること。そして、悩みや苦しみを分かち合う。情報交換をする。
そうすることで、「苦しいのは自分ひとりじゃない」と、思うことができ、安心感を生みます。

私の体験
私は高校生の頃、統合失調症を発症(現在は双極性障害)しました。まともに学校に通うこともできず、デイケア(精神障がい者の訓練・治療の場、または、憩いの場)に通っていました。
なので、高校3年生の成績は、オール1でした。それでも、追試を受けてなんとか卒業しました。卒業後も、デイケアに通いながら、大学受験の勉強をしていました。

デイケアは、楽しかったです。自分の悩みや苦しみを我慢することなく、吐き出せる。そんな環境の中で、ギターを弾いたり、卓球をしたり、デイケアが契約していたジムにいったりと、活動を通じて交流できることが、心の安寧でした。

デイケアで、特別ピアサポートをしていたわけではありません。しかし、「同じ苦しみを持っている方と感情を共有できる」ことは、薬よりも効く、心穏やかになるサポートでした。

認知症の方にとってのピアサポートとは?
「早期発見早期絶望」という言葉をご存知でしょうか。
せっかく早期に認知症とわかっても、「認知症である」ことに対するショックで絶望してしまいます。また、周りも「認知症」と診断された瞬間から「何も分からない人」という、レッテルを貼られてしまうケースがあります。

ご本人が絶望してしまう理由、ご家族や地域住民の方が、「認知症はの人は何も分からない人」という偏見を持ってしまう理由は、同じだと思います。

・正しい知識を持っていない(認知症と診断されたからと言って、いきなり何もできなくなるわけではないことなど)
・地域で、認知症の啓発活動が十分でない(認知症サポーター養成講座の開催がない、または少ないなど)

しかし、当事者の方や住民の方が悪い訳ではありません。問題は、日本の地域社会の文化が、影響しています。
・社会的偏見とスティグマ(特定の状態や病気に対する偏見や差別のこと)
認知症に対する偏見や誤解が根強く残っていると、当事者の方やご家族は、恥ずかしさや孤立感を感じやすくなります。社会の偏見が強いと、診断が「将来が不安になるような印象」として受け止められてしまうことが多いです。
・情報過多と誤った情報の影響
インターネットやメディアでの、誤った情報や極端な事例に触れることで、認知症のイメージがネガティブに固定されやすくなります。

解決方法
「早期発見早期絶望」を避けるためにも、ピアサポートが有効です。
診断後に、すぐに適切なサポートや情報提供がないと、不安が強くなってしまいます。
診断後に、ピアサポートがあることで、安心感を得ることができます。
また、ピアサポートをすぐにできなくても、医師や看護師の方から、丁寧な病気の説明、ソーシャルワーカーからの、社会的なサポートの説明が必須だと思います。また、認知症に対する正しい理解をしていただき、偏見をなくす活動も必要です。

まとめ
ピアサポートの重要性から、当事者の方が、自治体や厚生労働省から「希望大使(認知症本人大使)」と任命されるようになりました。
「希望大使(認知症本人大使)」とは、認知症についての正しい知識や、理解を広め、偏見や誤解をなくすために、活動する役割を担った方のことです。
同じ経験を共有する方々に、安心感を持って頂き、生きる力を引き出すことができます。また、認知症に対する社会の理解を広げる上でも、当事者の方の声が信頼性を持ちます。ピアサポートの重要性が大きく反映されています。
当事者の方だけでなく、専門職は当然ながら、地域で認知症の啓発活動を広げていく必要があります。
そういった活動が、認知症でも、そうでなくとも、すべての人が暮らしやすい地域になると思います。
それが、共生社会と言えるのではないかと、私は思っています。

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