いまだに、認知症に対する偏見は存在しています。
・ルールや慣例のこだわりから、困りごとに対応してもらえない
・昔からのイメージ・偏見で「認知症」と一括りにされる
・「何もできない」扱いを受ける
・疾患や症状の知識がなく、厳しい対応を受ける。
認知症の方は
・疾患に伴う認知機能の障壁
・社会的障壁
を抱えています。
「社会的障壁」が、社会全体の認知症に対する不十分な理解、偏見、誤解、先入観が生み出す心理的な障壁です。
まずは、個人が自分が認知症に対して、バイアスがないか問いかけてみましょう。そこで、一つでも気づきがあれば、大きな一歩です。
正しい知識を学ぶには、本でもいいし、認知症サポーター養成講座というものに参加してみるのもいいです。また、市町村役場の福祉課に行くと、認知症を解説しているパンフレットを置いてあることが多いです。それを読むだけでも、認知症に対する理解が深まります。
認知症の方が自分らしく生きるために
時間がかかっても、一般的には違った方法であっても、自分でできることを継続することが大切です。
「失敗する権利を奪わない」ことも大切です。道に迷ったり、料理が上手くできなかったり、買い物ができなかったり…。しかし「日常のトライ&エラーが人生」です。
一人では困難なことに対しては、フォローして、どうしたらいいか一緒に考えながら、工夫を繰り返していくことが大切です。工夫を繰り返していくことは、認知症介護では基本的な方法です。
「工夫」といっても、簡単にできるものばかりではありません。
工夫をするための一つの方法として、アブダクション(仮説推論)というものがあります。
①傾聴(ご本人の話をじっくり丁寧に耳を傾けて聴く)
②観察(ご本人の生活環境や、具体的な行動の観察)
③知識(人生歴を知る。認知機能障害の知識を学ぶ。教養を学ぶ)
これらをもとに、ご本人の言動の背景には何があるのか推理します。
そして、仮説を立てます
その上で、①②③を行い、仮説をブラッシュアップしていきます。
そうすることで、ご本人の想いや、抱えている課題(不安、焦り、寂しさなど)がみえてきます。
100%の理解ができなくても、アブダクションによって、理解に近づくことはできます。
アブダクションによって、どんな工夫が良いか、想像しやすくなります。
認知症介護でご本人を置き去りにしない
「家電が故障して、買い替えても、ご本人が使ってくれない。」ということはよくあります。
一つの方法として、買い替えるときには、ご本人と一緒に買いに行きましょう。ご本人が納得できるものを選ぶ(意思決定)で、買ったものを使おうという意欲につながります。
これには、ご本人の「意思決定」の大切さを表しています。
もう一つ大切なのは、ご本人に関係することは、ご本人と一緒に行く、あるいは行う、選ぶことです。
たとえば、ご本人の知らない所で、介護保険サービスが決められたりすることがよくあります。
しかし、ご本人を置き去りにして、様々な決定をすることで、自尊心が傷つき、自信を失い、自らの発信を諦めてしまうことになりかねません。ご本人がご本人の人生を送る支援が必要です。
まとめ
偏見を取り払い、認知症の方が自分らしく生きることができる社会は、誰もが生きやすい社会ではないかと思います。
みなさんが、当たり前のように送っている人生を、「認知症」があるからといって、その当たり前の権利を奪ってしまっているように思うこともあります。
しかし、認知症の有無に関わらず、誰もが自分らしく生きることができる環境が、認知症の方を救うのではないかと思っています。
認知症世界の歩き方 実践編――対話とデザインがあなたの生活を変える | 筧裕介, issue+design, 一般社団法人ボーダレス, 認知症未来共創ハブ |本 | 通販 | Amazon