認知症ケア~バリデーションとは②実践編~

投稿者: | 2023年7月27日

今回はバリデーションの実践方法についてお伝えします。

復習

バリデーションとは

認知症の方の感情や心に寄り添うためのコミュニケーション技法です。

目次

実践のためのステップ

①利用者の情報を集める

②利用者のフェーズを知る。併せてフェーズごとのニーズとシンボル、フェーズごとのテクニック

③まとめ

実践のためのステップ

①利用者の情報を集める→過去の経験から生じた感情を想起して、現在の行動として表現するということがあります。そのため、その人の生活歴をしること、また人生の中でなぜその選択をしたのかなど、情報収集することは、バリデーションでなくとも、認知症の方と関わる時にとても大切なことになります。

情報収集の際の聞き方→「はい」「いいえ」で答えられるような、いわゆる閉ざされた質問をすることで、答えやすくなります。そしてそれは安心感にもつながります。

②利用者のフェーズを知る(各フェーズごとのニーズとシンボル、使うテクニックを含む)

フェーズ1

・コミュニケーションがとれ、見当識も保たれている。

・否定をしたり、作り話をすることで、懸命にまだ失われていないものにしがみついている。

ニーズとシンボルシンボル:過去の重要な人物や物を表す、現在存在する人物や物のこと

未解決のままになっている問題を解決し、これまで表現していなかった感情を現在の人に対して吐き出すことが必要。現在の人を過去の人のシンボルとして使います。

◎反論や評価をせず、理解してくれる、礼儀正しい人との信頼のおける関係を必要としている。

使うテクニック

センタリング:精神の統一と集中です。ウエストから5㎝下の場所に意識を集中する。

リフレージング:利用者が言ったキーワード(感情が込められた言葉)を使って、要点を繰り返す。

レミニシング(過去を語る):利用者は過去の話によって、今の自分の気持ちを表現することがある。

オープンクエスチョン(自由に答えられる質問)

極端な表現を使う「一番~か?」「全部~か?」

真心を込めたアイコンタクト

相手の感情の動きを観察してそれに合わせる

相手の感情を、感情をこめて話す

フェーズ2

・コミュニケーションはとれるが、多くの時間は「その人の現実」の中で生きている。

・自分の欲求や感情を、あまりフィルターをかけずに表現する。

ニーズとシンボル

自分の中の世界に引きこもります。時間の感覚がなくなり、心の中の人生の時間をよりどころとします。時間ではなく、記憶を追い、自分の障害を辿っていきます。現在いる人や物がシンボルとなり、それが過去に戻っていくチケットになります。

使うテクニック

センタリング

カリブレーション:利用者の表情・姿勢・呼吸を観察して、同じように表情・姿勢・呼吸を合わせる「共感」を表現する手法。

クローズドクエスチョン(閉ざされた質問「はい」「いいえ」で答える質問)

曖昧な表現をする。無理に理解したり、問いただしたりしない。

フェーズ3

・まだコミュニケーションはとれるが、大抵は欲求や感情を自分の中に秘めている。

・動作や音で欲求や感情を表現する。

ニーズとシンボル

言葉が発達する前にしていたような動作や音を立てることで、現実世界から逃避します。そうすることで、自分を癒し、やり残した葛藤に向き合おうとします。体の一部がシンボルとして使われ、言葉でなく、動作で、感情や欲求を表現します。

使うテクニック

センタリング

カリブレーション

真心をこめたアイコンタクト

相手の感情を感情をこめて話す。

ミラーリング:動作や、息遣い、表情を真似て繰り返します。相手の示す感情を感じて行うことがポイント。

フェーズ4

・周りの人が知覚できるほどの表現や会話はなく、コミュニケーションがほとんどとれない。

・欲求や感情をほぼ完全に自分の中に閉じ込めている。

ニーズとシンボル

知覚できるほどの表現や会話がなく、自分の奥深くに引きこもり、ほとんどコミュニケーションを取らない方には、生きている限り、タッチングをし、存在を認め、関わることが必要。

使うテクニック

センタリング

カリブレーション

真心を込めたアイコンタクト

アンカード・タッチ:幼い頃の思いのこもった記憶は、脳の回路に永久に刻まれています。

手のひらを頬の上部にあて、円を描くようにする→母親との関係、感情

指先を後頭部において、中程度の力で円を描く→父親との関係、感情

手の外側を使い、小指を耳たぶの下にあて、両手をあごのラインに沿って下に優しくなでる→性的関係への感情

③まとめ

フェーズごとの、認知症の方の感情を認め、今回紹介したテクニックを用いて、コミュニケーションを図ることは、簡単なことでないと思います。だからといって、諦めずに、利用者に寄り添っていくことでこの「バリデーション」の技術が身についていくのではないかと思います。私もその段階にいます。皆さん、一緒に頑張りましょう!

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