障がいがあっても、認知症になっても、人は幸せに生きられる。

投稿者: | 2025年4月7日

生きづらさと「ホモ・パティエンス」

生きていく中で、どの選択をしても「生きづらさ」を伴うと思います。

たとえば、年収1000万円でも経済的に苦しい家庭はあります。しかし、年収が少なくても、経済的に困ることなく生活している家庭もあります。
また、障がいを持っていても幸せに生きている方はたくさんいらっしゃいます(私自身、精神障がい者ですが幸せです)。障がいを持ったからといって、不幸になるわけではありません。
さらには、認知症になっても、自分らしく輝いて生きている方もいます。認知症になっても、できることはたくさんあります。


フランクルの「ホモ・パティエンス」

フランクルは、人間の本質を「ホモ・パティエンス」と呼びました。
ホモ・パティエンスとは、「苦しみを耐え、意味を見出そうとする存在としての人間」という考え方を示しています。

人間は単なる「ホモ・サピエンス(知恵ある人間)」ではなく、苦しみの中でも意味を見出す力を持った存在だとフランクルは考えました。
特に、避けられない苦しみや死、喪失に直面したとき、人間は「なぜ生きるか?」という問いに向き合い、そこに意味を見出す力(自己超越する力)を発揮できると説きました。

この視点は、認知症や重い病気、老いや死をテーマにする心理学・精神医学、メンタルヘルスケアにも非常に大きな影響を与えています。


認知症ケアとホモ・パティエンス

フランクルの「ホモ・パティエンス」の考え方は、認知症ケアにおいても、認知症の人の尊厳を守り、困難があっても人生に価値があると支えるための深いヒントを与えてくれます。


1. 認知症の人を「意味を持つ存在」として尊重する

認知症ケアでは、「できる・できない」で人を評価するのではなく、存在そのものに意味があると捉えます。

ケアに活かす例

  • 小さな表現(目線、しぐさ、ふれる手)にも意味を見出す
  • 本人が何を言いたいのか、行動にどんな意味があるのかを尊重して読み取ろうとする
  • 「あなたがここにいること自体に価値がある」とケアする姿勢や言葉で伝える

2. 苦しみの中にも「意味」を見出す支援

認知症になると、本人も家族も、多くの「喪失感」(できないこと、変わっていく自分)に直面します。
フランクルは「避けられない苦しみにも意味を見いだせる」と説きました。

ケアに活かす例

  • 失ったものに目を向けるだけでなく、「今、ここにあるもの」「今できること」に目を向ける
  • 認知症になったことを、本人や家族が自分なりのストーリーとして語れるようサポートする
  • 苦しみの中での「小さな喜び」や「つながり」を一緒に発見する

3. 「自己超越」のサポート

フランクルは、人間は自分を超えて「誰かのため」「何かのため」に生きるとき、本当の力を発揮すると考えました。

ケアに活かす例

  • 本人が誰かの役に立てる場面を作る(たとえ小さなことでも)
  • 家族が「介護をする自分」に意味を見出せるよう、周囲が支える
  • 「あなたがいてくれて、みんながうれしい」と、存在が周囲に与える影響を言葉にして伝える

🌿まとめ

フランクルの考え方認知症ケアでの応用
苦しみの中でも意味を見出す「今ここ」のできること、喜びを大切にする
存在そのものに価値がある存在を無条件に尊重する
自己超越(他者のために生きる)小さな役割やつながりを支える

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