自身の診断に揺れ、考え続けたどり着いた、統合失調症の本質——主体性の喪失という視点

投稿者: | 2025年12月22日

統合失調症というと、
「妄想」「幻覚」「認知の歪み」といった言葉で説明されることが多いかと思います。

確かに、それらは統合失調症でよく見られる症状です。
ただし、必ずしもすべての方に現れる必須症状ではないことも事実です。

私は、思春期に統合失調症と診断されました。
しかし、ずっと「本当に自分は統合失調症なのだろうか」という疑問を抱えながら、
10年以上治療を続けてきました。

住む場所が変わり、病院を変えたとき、
「統合失調症ではない」という診断を受けました。
その後、双極性障害と診断されました。

さらに事情があり、再び住む場所と病院が変わると、
今度は双極性障害でもなく、
そもそも精神疾患なのかどうかも含めて再検討が必要という見立てになり、
現在は薬を減らしています。

このような経験もあり、
わたしは「統合失調症の本質はいったい何なのか」ということを、
ずっと考えてきました。

そして、たどり着いた一つの考えがあります。

統合失調症の本質は、
認知の歪みそのものではなく、
「自分が自分として世界に関わっている」という主体性の喪失、
いわゆる“自我障害”なのではないか。


ということです。

「認知の歪み」は結果として現れているもの

妄想や幻覚は、「間違った考えを信じている状態」と説明されがちです。
しかし実際には、論理的に訂正しようとしても、なかなかご本人のこころには届きません。

それはなぜでしょうか。

それは、問題が「考えの内容」ではなく、
考えを生み出している“自分”の感覚そのものにあるからではないかと思います。

・自分の考えが、自分のものではない感じがする
・誰かに考えを操られているように感じる
・世界が自分に直接語りかけてくるように感じる

こうした体験は、「認知が歪んでいる」というよりも、
自分と世界の境界が揺らいでいる状態と捉える方が、しっくりきます。

主体性が揺らぐと、世界は不安定になる

私たちは普段、無意識のうちに、

「自分が感じている」
「自分が考えている」
「自分が選んでいる」

という感覚を土台にして、生きています。

この主体としての感覚が揺らぐと、
世界は一気に不安定で、怖いものになります。

その耐えがたい不安の中で、
妄想や幻覚は、もしかすると
壊れた世界を必死に意味づけし直そうとする試みなのかもしれません。

そう考えると、妄想や幻覚は
「統合失調症の症状だから生じている」というよりも、
必死に自分を保とうとする心の働きとも言えるのではないでしょうか。

「自我障害」は、壊れたということではない

「自我障害」という言葉は、
どこか冷たく、壊れてしまった印象を与えます。

けれど実際には、

自分が自分である感じを、保てなくなっている状態

と表現した方が、ずっと近いように思います。

それは能力の欠如ではなく、
長い緊張や孤立、不安の中で、
自我がほどけてしまった結果なのではないでしょうか。

だから大切なのは「正すこと」ではなく「主体を取り戻す関わり」

この視点に立つと、支援や関わり方も自然と変わってきます。

・正しさを押しつけない
・解釈を急がない
・否定しない
・「どう感じているか」を尊重する

こうした関わりは、単なる優しさではありません。

それは、

「あなたは、今も主体としてここにいる」
「あなたの感じ方には意味がある」

というメッセージを、態度で伝える行為です。

また、
「妄想を膨らませないように」という姿勢で関わることが、
本当にご本人のためになっているのか。
それは実は、支援者側の不安やニーズではないのかと、私は考えることがあります。

統合失調症を患う方に限ったことではありませんが、
「どれだけ誠実に、一人の人としてかかわるか」
それが、支援者の、「一人の人と、人との関り」として、最重要課題であると私は思います。

主体性は、説得では取り戻せません。
尊重される経験の積み重ねの中で、少しずつ戻っていくものだと思います。

おわりに

統合失調症を
「理解できない病気」
「危険な病気」
として遠ざけるのではなく、

主体性が揺らいでしまった人の、深い生きづらさ
として捉え直すこと。

その視点は、
ご本人を守るだけでなく、
支える側の心も、きっと軽くしてくれるはずです。

誰かを正そうとしなくていい。
ただ、その人の世界に、静かに立ち会う。

そこから、回復への道は始まるのだと、私は信じています。


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