デジタル終活は、「デジタルの問題」だけではない―「一人の人」としての尊厳を守るために

投稿者: | 2026年5月27日

スマートフォン、
SNS、
ネット銀行、
サブスクリプション…。

今は、高齢の方の生活にも、
デジタルが深く入り込む時代になりました。

そして私は、
「高齢者だから」というフレームで、
人を捉えたり、判断したりすること自体に、
問題の本質があるようにも感じています。

大切なのは、
“高齢者”という枠組みを超えて、
“人と人との営み”として捉えていくことです。

・スマホのロックが解除できない
・パスワードがわからない
・詐欺メールを信じてしまう
・契約内容が把握できない
・本人死亡後も課金が続く

このようなことが、
介護現場やご家族の困りごととして、
少しずつ増えてきています。

私は約20年、
相談支援や認知症ケアに携わる中で、

「これは単なるITの問題ではない」
と考えています。

そこには、

ご本人の不安、
ご家族の葛藤、
介護現場の限界…。

そして、
“その人らしく生きる”という尊厳の問題
があるからです。


「危ないからやめて」は、誰の困りごとなのか

ご家族や介護現場から、

ご本人に対して、
「危ないからスマホをやめてほしい」
という声を耳にします。

そして、
それをご本人のいない所で
相談が行われていることが多い。

さらに、その結果を決定事項として、
ご本人への説得や説明が始まる。

この展開で、
スムーズにことが収まったケースは、

私の知る限りでは、
見たことも聞いたこともありません。

ご家族や介護現場が、
「どうしたらよいのか」と
悩んでしまうという気持ちはわかります。

私自身、
デイサービスで働いていた頃には、
「どうしたらご本人は納得してくれるか」
と悩んだこともあります。

しかし、
これは誰の困りごとでしょうか。

誰のニーズを満たそうとしているのでしょうか。

ご本人ではなく、
周りの人の困りごとやニーズを満たすために
「どうやったら納得してくれるのか」と、
四苦八苦している状態ではないでしょうか。

わたしは、だからといって、
周りの方たちを責めたいわけではありません。

周りの方たちの困りごとであるということも、
事実だからです。

ただ、
ご本人の困りごとの解決、
ご本人のニーズを満たす。

その視点に立った方が、
結果として、

ご家族や介護現場、
そしてご本人自身の心も、
軽くなると私は考えています。

「誰も悪くない」
のです。

だから、誰かを責めることではなく、
“どうすれば、ご本人の尊厳を守りながら、安心も支えられるか”

を考えることが、
ご本人も含め、みなさんの心を軽くします。


デジタル終活は、「デジタル版ACP」でもある

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という言葉があります。

人生の最終段階や、
判断力低下に備え、

「本人がどう生きたいのか」
「何を望むのか」

を、必要に応じて、
様々な職種や関係者を交えて、
事前に対話を繰り返し行う取り組みです。

人生会議と呼ばれることもあります。

実は、
デジタル終活も非常に近い側面があります。

例えば、

・誰が管理するのか
・どこまで家族と共有するのか
・何を残したいのか
・どこまで支援を受けたいのか

こうしたことを、

「ご自身での管理が難しくなる」

または、

「ご本人の同意を得ることが難しくなる」
前に、対話をしておくことは、

単なる整理ではなく、

「ご本人の意思、尊厳を守る支援」

でもあります。

私は、これを
「デジタル版ACP」
とも言えるのではないかと考えています。


介護現場には、「支援の空白領域」がある

介護現場では、

・変なSMSが来た
・課金されている
・契約内容がわからない

という相談を受ける場面があります。

しかし、
介護職はIT専門ではありません。

責任範囲も曖昧で、
現場職員ほど介入しづらい現実があります。

現状として、
生活相談員や管理者などの対応領域となっていると
感じています。

そして、
生活相談員も管理職もまた、
IT専門ではありません。

だからこそ、

多職種連携の中に、
IT専門職が介入する必要性が高まっています。

IT専門職単独ではなく、ケアマネジャーや現場職員と一緒に、
必ずご本人を交えて、困りごとを解決していくことが大切だと思います。


「理解できない=排除していい」ではない

認知症ケアで、
私はずっと大切にしてきたことがあります。

それは、

「たとえ記憶障害があったとしても、
すべて忘れてしまう訳ではない。
特に、感情記憶は残り続ける。」

これは、

「理解できないように見えても、
その人の存在や想いは消えていない」

ということです。

だから私は、

・ご本人の同席
・ご本人の参加

は必須だと考えています。

周りの方だけで、
話を進めた方が早いこともあるかもしれません。

でも、

“その人抜きで、その人の人生を決めていく”

ことは、
そこに「その人」は存在していないのです。

さらに、それでは
本質的な解決にはならないと思います。

これは、
認知症ケアに限った話ではありません。

医療の現場でも、
日々の暮らしの中でも、
同じことが言えます。

なぜなら、これは、
人としての尊厳に関わることだからです。


最後に

デジタル終活は、
“亡くなった後の整理”だけの話ではありません。

それは、

ご本人の意思を守ること。
ご家族の後悔を減らすこと。
介護現場の孤立を減らすこと。

そして、

「その人らしく生きる」を、
最後まで伴走していくことだと思っています。

これからの時代、
認知症ケア・ACP・デジタル支援は、
別々ではなく、つながっていく領域だと、
私は考えています。

私は、
現場経験と対話支援の視点を活かして、
その“つなぎ役”として、伴走していきます。


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